2008年7月1日火曜日

理科系のためのデザイン~構造化(その1)

 前回、S/N比という比喩をつかって装飾をそぎ落とすデザインについて説明してみた。今度は「構造化」をキーワードに、デザインにおけるグリッドやモジュールの重要性を見て行きたいと思う。

図:構造化プログラミングの典型的なフローチャート

 理科系人間にとって、「構造化」は重要なテーマである。エンジニアリングやサイエンスの世界においては、どんな知識も形式化されているから、その情報量たるや膨大である。それらをいかに漏れなく重複なく、スッキリと構造化して整理できるかが、研究成果をまとめるときの肝になる。
 特に、短期間で膨大な情報を扱うソフトウェアの世界においては、プログラムを小さな機能単位(モジュール、サブルーチン、インスタンスなどという)に分割して、これらの単位を積み上げることによって全体として複雑な構造を持つシステムを設計する。機能単位ごとに分けることで、次のようなメリットがあるといわれている。

1.システムを観察する人(エンジニア)が変わっても、全体を容易に把握することができる。
2.ヒトの認知限界を超えることなく、効率的にシステム全体を設計・最適化できる。
3.システムの目的が変更(バージョンアップ)されるときに、モジュール単位で交換が可能である。

 こうした思想は1960年代ごろから盛んに取り入れられるようになった。ちょうど、建築の世界でメタボリズムの様式が流行した時代とも一致するところが面白い。

写真:日本のメタボリズム建築を代表する中銀カプセルタワービル、バブル経済とポストモダンが生んだ夢の跡。

 実は、デザインにおける表現の構造化と、理科系人間の考える構造化とは、ほとんど同じ概念であるように思う。次回はそのあたりについて詳しく見てみたい。(つづく)