神保町シアタービルの検討例と外観(デザイナー:日建設計・山梨知彦氏)
神保町シアタービルが、面白い。独特なファサードも面白いけれど、もっと面白いのは、この建物が建築法上の天空率の制限のなかで制約されたボリュームを、いっぱいいっぱいに使っている点である。当然、複雑な計算を要するので、意匠設計・構造設計の段階から3次元CADが活用されていると聞いた。3次元CADに夢があるなと思うのは、環境性能の向上やら施工の効率化が起こるからではない。設計者のイマジネーションが増幅されるからでもない。設計意図を表現するビジュアライゼーションによって、建築の民主主義化が促進されると思うからだ。
元来行われてきたパースや模型によるプレゼンテーションは、住宅やマンションを購入する施主にとって認知上の問題があった。普段見慣れていない特殊な表現から、自分の生活を想像しないといけないためだ。3次元CADによって現実性の高い建築空間が再現されれば、実際にそこで生活する様子を文字通り体験することが可能になる。
神保町シアタービルは住宅ではないし、あくまでフラッグシップ的な要素が大きいのだろうけれど、こうした技術が我々の私生活の「眼に見える」位置まで降りてきてくれることに期待したい。