2009年12月25日金曜日

レム・コールハースの概念世界

 先日、北京へ行ったときに泊まった「北京新世界ホテル」は、スタッフの対応・サービスも含めて大変立派なものだった。ただその真向かいに建っていた、異様としか言いようのない高層ビルの景色を除いては。
 そう、それは中国中央電視台本部ビルだった。建築家レム・コールハースらと構造デザイナーであるセシル・バルモンドによるその「作品」は、今年はじめの事故で全焼してしまい、無残にも建築家の墓標となっていた。



 こちらは超高層ビルを否定するかのような、何ともコンセプチャルな当初のパース。燃えてしまったのはこの隣の兄弟ビルだが、地下でつながって一体をなすため、本部ビル全体が現在も工事をストップしている。

建築の概念と現実
 無残に燃え尽きたビルは、建築家の思いと現実とのギャップを比喩する一種のインスタレーションアートのようだった。それは、立派な風貌の東京都庁と、とても人間的とは思えない実際の使われ方とのギャップやら、住宅街に突如として出現した有名建築家によるコンクリート建造物が、実際は地元に馴染まずテナント募集の張り紙だらけにされている様子やらと重なって、私の脳裏に焼きついて離れない。



 モダニズム建築という概念の集大成であるプルーイット・アイゴー団地。スラム化によって手が付けられない状況となり、後に爆破解体された。


 左はイングランド銀行の廃墟予想図(ジョセフ・マイケル・ガンディ)、右は「つくばセンタービル」の廃墟予想図(磯崎新)。いずれも、「文明が崩壊した後も遺跡として残る名建築」をイメージして描かれたもの。しかし、文明が崩壊するどころか、竣工前からすでに荒廃している建築も少なくない。

(via 建築/写真/映画の記憶