「光の三原色」って本当にあるのだろうか?
「人の網膜には色を判別できる受容体が3種類ある」というのと、「光に3つの原色がある」というのは全く別の話しだと思う。
けれども我々は「色の三原色」「光の三原色」という実に曖昧な表現を教え込まれているためか、どうもこのあたりを混同しがちではなかろうか。実は、私もしょっちゅう間違えてしまう。例えば、
- あるものが正確に赤(600nm)に見えているからといって、その光がレーザー光線のように赤(600nm)の成分だけを含むとは限らない。(光の波長と錐体の反応)
- 印刷物の色と液晶モニターの「色」が完璧に同じに「見えた」としても、まずほとんどの場合それらは同じ「光」ではない。(光の周波数成分)
- 全く同じにみえる「白色光」の照明であっても、それが照らしたときに色がみやすい白色光とそうでない白色光とがある。(演色)
- 夕暮れ時に景色がブルーグレーに「見える」のは錯覚(プルキンエ現象)
「あたりまえじゃん」といえる人は、正しい知識を持っている人。
ひとつでも「?」が浮かんだ人は、私と一緒に勉強し直しましょう。
ちなみに世界には4色型色覚、つまり色を見分ける受容体が3つではなく4つある人がけっこう居るらしく、この人達の色の世界ってどんな感じなんだろう?我々の知らない「色」がみえているわけで、なんだかとてもロマンチック。
逆に4色型色覚の人々からみた我々の色の世界というのは、同じではない「色」を同じだと混同しているわけで。さてこの場合、どちらが「色覚障害」なのだろうか?(分解能力をとるか、適用人数をとるか)
色を見分けられない人たちの島
南太平洋のピンゲラップ島は、かつて台風でほとんどの島民が亡くなってしまい、その時たまたま生き残った僅かな島民の中に全色盲(色が全く分からず、明るさしか知覚できない)の人が居たために、その末えいの10人に1人が現在でも全色盲なのだという(ちなみに日本では数万人に1人)。その代わり、杆体細胞の働きによって闇夜での視力はとても良く、住民は夜になると活動しだして魚を捕るという独特の文化を形成していた。
このピンゲラップ島の旅行記を書いているのが、オリヴァー・サックスの「色のない島」というノンフィクション小説。あらためて「色って何だろう?」と考えさせられる一冊です。