2009年10月19日月曜日

デザイナーがエンジニアリングを語るな!

ジェームス・ダイソン国際デザインアワードの結果が発表されているみたいだけど、これはもう、「お笑い」としか言いようが無い。


キッ チンで使う消火器で、普段は蛇口として使えながら、火災時には水が噴射されるのだとか。Royal College of Artのプロジェクトでつくられた作品らしい。最近のRCAはこうしたインタラクション系の提案が得意らしいけれども、物事をクロスオーバーさせるとき は、相手の領域のことを良く調べた方が良いと思う。デザイナーごときが、エンジニアリングについて語るな!(これは逆もいえる。エンジニアごときが、デザインを領海侵犯してはならない)

領海侵犯のデザイン
先の消火器は、エンジニアリング的に明らかな欠点がある点で、領海侵犯のデザインだといえる。

  • キッチンの火を消すときは、絶対に水をかけてはならない(キッチンでよく起きるB火災、すなわち油などの可燃性液体による火災において、そのまま水道水をかけると被害が拡大してしまう)
  • 自動消火器は、一般的に火点真上に設置しなくてはならない。ましてや遠い場所にあるシンクから霧を吹いた程度では、何の効果も期待できない。
  • 火災と停電は同じタイミングで起きる(例:ブレーカーがキッチンにあった場合)。よって消火器の起動を家庭用電源だけに頼ってはいけない。
  • 火災と断水も同じタイミングで起きることがある(例:地震火災や、電動の水道ポンプを使っている家庭)。よって、水力に頼らないことが望ましい。
これは、自動消火器に関わるエンジニアが何年もかけて蓄積した知見であり、実際の悲しい事故事例から学んだ生きた知識だ。 もちろん、デザインとエンジニアリングを「融合」することは素晴らしいと思う。でも、単なるデザイナーの「思いつき」だけでは、エンジニアにとって大きな 反感を買うことになる。綿密な外交手段無しに、領域間のクロスオーバーというのはあり得ない。もちろん、これは自分への戒めでもあります。。。