2010年2月17日水曜日

石原慎太郎「再生」220ページ



石原慎太郎の小説を読むと、脳がアポトーシスする。と思っていたけれども、これは良くかけている。だって、目が見えず耳の聞こえない東大教授、福島智先生の博士論文が元ネタなんだもの。爆笑問題と福島先生のちょっと恥ずかしい対話は、こちらで、まだ見られると思う。
  • それは偶然とはいえ美奈子さんのお陰でした。彼女は指点字による私との会話のついでに、その延長として私と彼女以外の仲間の会話を、いわば通訳してくれたのです。それは指点字による私と相手とのただ二次元のコミュニケイションとは違って、見えも聞こえもしないが歴然とした三次元のものでした。
コミュニケーションのあり方について現象学的に描写されたあたりは、ハッとさせられる場面が多い。
かと思いきや一方では、カフカの「変身」を題材にした、
  • 「俺たちは虫なんだよな、やっぱり虫なんだ」「でかい図体に細い足が生えた、白い杖をついてよちよちしか歩けぬ虫なんだ」「お前だって、それはわかってるんだろうに。目明きの奴らは見ぬふりして気の毒げに何かいってくれても、目暗の俺たちには連中の心の底がようく見えるんだ。所詮お邪魔虫なのさ俺たちは」
  • 「そうじゃないさ。俺たちはただ障害のある人間だよ。君は自分の障害を受け入れられないのか。要はその問題だと思うよ」
といったやり取りをはじめ、障害を取り巻く厳然たる事実の厳しさがスリリングに描かれている。
でも何で小説家・石原慎太郎が障害者を話題にしたのかは、よくわからずじまい。福祉をガリガリに痩せさせる都知事の顔とは、全く別物なのでしょうね。