2008年8月11日月曜日

レイアウト教材としての牛乳パック~その2:なぜ牛乳パックか?

どうして牛乳パックか?
 レイアウト・グラフィックデザインの勉強をするにあたって、なぜ「牛乳パック」のパッケージデザインを考えることが適切なのかを考えてみる、という話しでした。牛乳パックに限らず、初心者向けのデザイン教材は次の3つの特徴をもっているべきだと思います。

1.親しみやすい
 親しみやすい商品についてのデザインをターゲットとすることで、その教材に対する興味が自然と沸いてくるでしょう。「親しみやすい」ためには、誰もが見たことがあり、そして買ったことのある商品でなくてはなりません。また特定のセグメントを相手にした商品ではなく、万人が利用する商品である必要があります。
 例えば特急電車をデザインする、という課題は、ごく一部のマニアには受けるかもしれませんが、興味のない人にとってはどうでも良い世界でしょう。「どうでも良いと思っているものを一生懸命考える」ことができれば本当のプロフェッショナルかもしれませんが、物事の基礎を教えるのに適切な手法とは思えません。

2.四角四面
 牛乳パックは文字通り、底辺が2.764×2.764インチ(約70×70mm)の、四角四面な形をしています。そしてこの形状は規格化されており、造形的な変更は不可能です。ちなみにこれは、アメリカで使用されていた牛乳瓶を入れる運搬箱の大きさの規格が外寸12×12インチ(約305×305mm)であったことから、そこにピッタリ入る底面をもつようデザインされたらしいです。
 形状が規格化されているおかげで、造形は無視して、純粋にグラフィックについてだけ考えることができます。これが規格化されていないパッケージ(例えば化粧品)について考えるとなると、グラフィックとパッケージ形状の関係について複雑な思索をめぐらせなくてはなりません。

3.明確な制約条件
 食品であるおかげで、食品衛生法上の表示義務が発生します。例えば、商品名、内容量、消費期限(賞味期限)、原材料・添加物、製造者氏名、製造者所在地、保存方法、アレルギー物質、遺伝子組み換え素材の有無など、もろもろの事柄を明記しなくてはならず、しかもこれらはけっこうな面積を消費します。与えられたルール(制約条件)の元で、自分の経験や感性を生かした作品をつくるための、良い訓練になるのではないかと思うのです。

牛乳パックのお手本
 良く出来た牛乳パックのデザインは、既に世の中に沢山出回っているようです。



 写真左は、いわずと知れた佐藤卓デザインの「明治・おいしい牛乳」です。写真中は、あからさまに明治に対抗した森永のおいしい牛乳(デザイン:ランドーアソシエイツ、ディレクション:江川勤氏)、 コップのモチーフを避けて牛乳瓶を使っているのが、何とも愛らしいデザインです。また、ゴールドの近似色や光沢感などで高級感を演出した苦心の作とも言えます。写真右は、シンプルな文字構成が逆に印象 的な東京牛乳、なかなか綺麗にまとまっているのではないかと思います。


 身近にある製品のデザインにチャレンジすることを通じて、デザインに少しでも興味を持ってもらえれば良いなと思っています。