最近、イノベーション関連の書籍を読んでいて出てきた仮説です。
- 誰かに「ほしい」と思わせるものは、企画者の感性力を高めないと絶対に出ない。
- 演繹的分析から出てくるのは「機能価値」のみである。
これまでイノベーションにおける「感性力」はあまり問題にされなかったが、昨今のプロダクトを俯瞰していてわかるように、機能価値によるイノベーションは収束し、あらゆるプロダクトはコモディティ化と生産合理化のフェーズに入っている。そんな中で、あなたの会社の風土やアセットに合わせた商品を提案するためには、これまで以上にカンと感性力を鍛える必要がある。
デザインコンサルティングに騙されるな!
さて、賢い人は、企画が「売れる売れない」を説得するための「現代版占い」として、または、売れた企画に対して後付の味付けをするための「方便」として、演繹的分析を使うか、使ったふりをする。
賢くない人は、賢い人の振る舞いを鵜呑みにしてしまって、あたかも演繹的分析から「素晴らしく売れる商品」が企画できたものと錯覚してしまう。この錯覚はロジックが通っていて、成果がベースとなっているので、
信じ込みやすい、もしくは困っている人にとって信じたくなる要素で一杯である。そしてこの錯覚を起こさせるためのセミナー、授業、書籍が氾濫している。いわく、ブルーオーシャン、オープンイノベーション、感性価値マーケティング、デザイン戦略経営、デザイン思考など。
以上をもって、世界中に「イノベーションの格差」が蔓延している。すなわち勝ち組(賢い者)president誌やらハーバードビジネスレビュー誌などの業界紙、あるいは大学院のMOTやMBA、最近では総合大学の一般講座や美術大学で雄弁に成功の方程式を語り、負け組(賢くない者)は、メディアやアカデミズムを信じ込み、彼らにコンサルティングフィーを払うことになる。
負け組の中でも、1000万円を越えるコンサルティングフィーを払えないような予算の無い貧乏な組織や、教養を持つ3G型のインハウスデザイナーや大学院卒の研究員といった、「わずかばかり賢い者」を雇っている会社は、自分たちで「成功の方程式」を追う作業にとりかかる。しかしこれらは「創られた幻想」であるから、最終的には失敗する。
そしてこれら失敗事例は、またも勝ち組たちの「後付の分析」にかけられ、
再び勝ち組たちが狩猟をするための餌(=ケーススタディ)となる。