2011年6月1日水曜日

低コストで軽量な視覚障害者用の「スマート電子白杖」の製品化に成功!


視覚障害者が使う白杖(はくじょう)に、バッテリーやらGPSやらセンサーやら様々な電子デバイスをゴテゴテと付けた研究やプロトタイプを良く見るけれども、
  • 量産したときのコストが高い、もしくはコスト検討が一切なされていない
  • 下手すると500g以上もあり重い、そんなもの誰も持ちたくない
  • 落としただけで壊れるなど、実用レベルの耐久性が無い
というお決まりのパターンに陥ってしまっていて、ちゃんとしたプロダクトの領域までたどり着く可能性のある例をあまり知りませんでした。
下手すると「防水性ゼロ」「バッテリーが一日も持たない」など、やもすると「単なる研究のための研究、デザインのためのデザインでは?」といわれても仕方ないようなものも。もっとひどい物になると、視覚障害者向けデバイスなのに「明らかに余計なLEDが付いている」、日用品なのに「大きな声で勝手にしゃべる」など、もはやエンジニア・デザイナーの自己満足的な方向に向いてしまっているように見えるものも拝見することがありました。それはそれで、気持ちは良くわかるんですけどね。。。

しかしこの「スマート電子白杖」ですが、とりあえず「安い」「軽い」「強い」の三拍子がちゃんと揃っているのがスゴイ、これだけでも革命的。バッテリーも数ヶ月持つみたいだし、防水性の検討も行われているみたい。これは期待できるかもー。早く実際のユーザーレビューを聞いてみたいところ。
これをきっかけに、日本中の研究者とデザイナーが、プラクティカルな視覚障害者向けデバイス開発に躍起になることを期待しましょう!

詳細はこちらから。

  • 秋田精工株式会社(社長:須田 精一)と秋田県立大学(理事長:小間 篤)は、共同で開発を進めていた視覚障害者用「スマート電子白杖」(商標登録出願中)の製品化に成功し、平成23年5月31日(火)より受注を開始します。
  • 「スマート電子白杖」は、視覚障害者が使用している本来の白杖機能に加えて、杖の上部に取り付けられた超音波センサーで正面と頭部前方の障害物を感知し、グリップとリストバンドの振動により障害物の情報を使用者に伝えます。秋田県立大学の岡安 光博 准教授が3年前から開発を始め、2年前には機械の設計・製作を担当する秋田精工株式会社が開発に加わり、さらに、県視覚障害者福祉協会(会長:煙山 貢)も協力して、海外製品と比較しても優位性を持つ軽量化と低コストを実現しました。
  • なお、この研究開発は、科学技術振興機構(JST) 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) シーズ顕在化タイプ(課題名:「視覚障害者用『スマート電子白杖』の高信頼性・低コスト製造法」(研究者:秋田県立大学 准教授 岡安 光博、企業:秋田精工株式会社)により行われているものです。
  • 本開発では、秋田県立大学が超音波センサーの計測・解析システムを開発し、それを用いて検知距離特性、指向特性(検出できる範囲)、環境特性(気温、湿度、雨、防滴性)などの検討を行いました。その結果、検出可能距離は1~3m、検知可能な最小物体は直径約5mm、指向特性は約40度など、実用化に要求される特性を満たしていることを確認しました。また秋田精工株式会社では、秋田県立大学が開発した耐久試験システムを使用して、杖の部分に使用するアルミニウム合金材の疲労強度特性、ケース材の曲げ試験、圧電セラミックスの疲労強度特性などを検討し、250万回以上叩く使用に耐えることなども確認しました。
  • 電源には一般に使用されているリチウム電池を採用し、通常の使用法で2~3ヵ月は継続使用が可能です。スイッチを入れた時の振動方法で電池の消耗状況が分かる工夫もされており、万一電池切れとなってもコンビニなどで入手できます。
  • なお秋田県では、今年度より「視覚障害者用電子白杖購入費助成事業」を創設してスマート電子白杖購入者に対する助成を行います。この助成制度は、産学官の連携の成果により開発された画期的な福祉用具を普及し、視覚障害者の生活の質の向上など、県内障害福祉の一層の向上を図ることを目的としています。
  • 秋田県内の視覚障害者は3,000~4,000人といわれており、このうち1,000人程度が対象になると考えられます。また全国的に見ると、その約100倍の対象者がいると推定されます。すでに類似の電子白杖は発売されていますが、非常に高価(10万~25万円程度の外国製品)であるため、普及が進んでいません。しかし今回開発した白杖は、金型を用いて量産化に成功したため、低コスト(約3万円程度)かつ軽量(一般の白杖とほぼ同程度の重さ)であることから広く活用されるものと期待されます。