2008年5月24日土曜日

ログ×デザイン ~ EUの出入国スタンプ、御影札

 ログ(log、記録)には、2つの意味がある。証拠(evidence)としてのログと、生きた証としてのログ(life log)だ。情報システムの世界ではもっぱら前者の意味で使われる「ログ」だが、そこにデザイン思考の要素が入ると、なかなか面白いことが起こる。

 
上:EUで実際に使われている出入国スタンプ、左は飛行機による出国、右は電車による入国を示している。下:佐藤雅彦さんが展示用にリ・デザインした日本の出入国スタンプ(RE DESIGN―日常の21世紀より)

 EU諸国では、出入国の際のパスポートスタンプに、明瞭に統一されたシンプルなデザインが採用されている。これは主に、証拠としての明瞭性・空港現場での認識性を高めることを目的としつつ、造形的な美しさを高めているように思える。

写真:御影札を屏風に仕立てたところ。

 同じ移動記録でも、四国八十八ヶ所をめぐる御影札(おみえふだ)は、全部集めると屏風に仕立ててもらえるという素敵な特典がついている。パスポートを見るときの楽しみも、御影札の屏風仕立てもいわば、「思い出の可視化」ということができる。

写真:東大のデジタルパブリックアートプロジェクトで試作されたSuicaを使ったインスタレーション(論文)、自分のSuicaをかざすと、中に記録されたログ情報を機械が読み取り、自分のこれまで移動した経路が地図上に表示される。

 生きた証を残すことを、ライフログという。その意味ではケータイの着歴や、キーボードに付いた手垢も、一種のライフログだ。眠っていたライフログに目をむけ、表現の方法を再構成することで、新たな付加価値を生み出すことができないだろうか。

■今日のデザイン思考・実践編■
→生活の中で、会社の中で、学校の中で、自然の中で、私たちはどんなライフログを残しているだろうか?
→そのライフログは、どんな形で残っているか?可視性はあるのか?永遠に記録されているのか?
→ライフログを加工・再構成することで、何か付加価値を生み出すことはできないだろうか?