ハイテクを取り入れた製品をつくっているMONGOOSE STUDIOの、ブラインド照明(blight blind)がステキだ。壁にかけたブラインドの裏一面に有機ELが組み込まれていて、その反射光があたかも窓から漏れる朝日のようにみえる。ハイテクをうまく用いた「見立て」のデザインだと思う。
以前、松下電工でHOME ARCHIシリーズを担当されているデザイナーさんと話をしたときに、照明屋の夢の歴史というのをうかがった。曰く、「最初は点光源しかなかった。ロウソクと電球。蛍光灯の出現によって、それが線光源になった。おかげで今、継ぎ目の無い(シームレス)蛍光灯は店舗の間接照明などで多用されている。そして今、LEDや有機ELのおかげで均一な面光源が実現でき、壁一面や床一面をまんべんなく発光させられる時代になった、まさに夢の時代だ」とのことだった。確かに新しいマンションや公共施設へ行くと、壁一面がこれでもかというくらい均一に光っている未来的な空間を目にすることが多い。通常のハロゲン球やHIDランプを使ったウォールウォッシャーランプも、「いかに器具を目立たなく小さくし、壁一面を均一に照らすか」が開発課題であるという。
私は、「今や発光面をどうコントロールすることが業界の課題であって、そのなかで照明器具自体は見えないものになり、そのうち器具をデザインする必要が無くなるのでしょうか」と、ちょっといじわるな質問をしてみた。どうやらそのデザイナーさんの悩みもそのあたりにあったようで、「壁照明におけるデザインの自殺」といった話を口にされていた。
その点、MONGOOSEのブラインド照明は、自殺しそうになりかけた壁照明のデザインを、新たな手法で救出しているように思う。消えかかる灯火があれば、誰かがそっと息をかけて火を盛り返す。そんな静かな攻防が繰り広げられている。