シニア向けの面白いコンテンツが無いか探しているとき、たまたまFlickrでカラー写真で見る第二次世界大戦中のアメリカの風景を特集したページを見つけた。
口紅のような機械で戦闘機用の配線をチェックする女性が印象的だった。戦時中らしくアーミー調フォントの腕章、お化粧、使い古した手袋、髪型、どれをとっても古い写真だとわかり、鮮やかなカラー写真であることに違和感さえ感じる。一方で男性はというと、対戦中も現在も大して変わっていないような印象を受ける。
ずいぶん前に、マグナムが撮った東京展で、巨匠たちの撮った東京の風景が1950年代から順に並べられていたのを思い出した。 一通り展示を見た後で、「何かおかしい」と感じた。1950、60、70、80、90年、そして2000年以降も、
変わらず写真に写っているモノがあるのだ。自分でもよくわからず、もう一度展示を見てそれは判明した。
それは、おっさん(ossan)である。つまり、おっさんの風体というものは、1950年から一切変わっていないのだ。例えばマグナムの撮った新橋のおっさん(1950年もの)を、とつぜん現在にタイムスリップさせたとしても、全く違和感が無いようだった。メガネの形とか若干のディテールの違いはあるものの、テロテロのスーツ、表情の作り方、カバンの形状にいたるまで、ほぼそのまんまである。女性の場合は服装、髪型、お化粧、はたまた歩き方に至るまで、しっかり時代ごとに変化している。変化の遅い建築でさえすっかり変わっているというのに。おっさん(ossan)は、安定していると思った。drawing and manual(D&DEPERTMENT)のナガオカケンメイさんは、
ロングライフデザインとは製造されて10年以上経っても製造され続けられ、使い続けられ、愛されているデザインのこと。
とおっしゃっているけれど、女性が革新的・循環的なのに対して、おっさんはロングライフデザインなのかもしれない。着慣れた感じのスーツ、地味なネクタイ、トレンチコート、黒い傘を携えたおっさんは、どこか安心感を与える気がする。
最近は新入社員を筆頭にすっかりスタイリッシュなスーツが浸透した感があり、典型的なサラリーマンのおっさん像が引き継がれなくなりつつのではないだろうか。遺産になる前に、誰かおっさんを主題にした写真集、つくってくれないかな。
■今日のデザイン思考・実践編■
・あなたの持ち物の中で、10年前にタイムスリップして写真集に写ったとしても違和感の無いものはあるだろうか?
・逆に10年後にタイムスリップしても、流行に左右されず生き続けるものはあるだろうか?
・それはなぜだろうか?
2008年5月16日金曜日
写真の中のロングライフを探して
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