2008年4月13日日曜日

チョコレートと牛丼にみるメディア変換

 もう40年近く前に書かれた統計でウソをつく法では、人間のヴィジュアル・イメージや心理モデルを巧みに利用しながら、物事をいかに大げさに表現することができるかについて、面白おかしく書かれている。近年の金融商品の広告(新生銀行なんて上手ですね)や、行政が発行する白書の類いを見ていると、統計結果をいかに魅力的に魅せるかあらゆる工夫がこらされるようになってきており、40年以上たってもプレゼンテーションの技法として「統計表現」の手法が未だに有効であることにほくそ笑んでしまう。
 著者のダレン・ハフ氏は、「ウソをつく法」を伝授したかったというよりは、人の直感やイメージという主観定性的要素と、統計といういかにも客観定量的要素とが結びつくことで、単なる数字の羅列や退屈なグラフに色気がかかり、物事が魅力的に表現できるという、デザイナー的な表現の可能性を見せてくれたように思う。

 昨年の「深澤直人ディレクション Chocolate 」にマイク・エーブルソン+清水友里(POSTALCO) “カカオ・トラベル” 2007という作品が展示されていたけれども、ここでは熱帯を産地とするカカオ豆がどのように流通し、チョコレートとして消費されているかが、水道管という誰もが知っている仕掛けによって見事に可視化されていた。

 牛丼一杯をつくる過程で必要とされる水の量を、「牛丼=2000リットル」という何ともいかにもキャッチーなグラフィックで表現して見せたのは佐藤卓ディレクション「water展」だった(これまた去年の話しで恐縮ですが)。


 どうやら、あるアナロジーによってメディアを再変換するという作業は、デザイナーの得意分野らしい。こんなにも普遍的で、直感にうったえ、記憶に残り、そして説得力のあるプレゼンテーションの方法論を、デザイナーだけのものにしておくのは勿体無い
 それを風の強さに例えたら?違う国の国家予算に例えたら?トラックの騒音に例えたら?単なる数字や統計指標だけにとらわれず、常にメディアを縦断しながら、数字に色彩を付け、新鮮で心地よいショックを与える事を考えておきたいものですね

参考
http://www.japandesign.ne.jp/HTM/JDNREPORT/070530/chocolate/2.html
http://www.tokyoartbeat.com/tablog/entries.ja/2007/12/water.html%22%3Ehttp://www.tokyoartbeat.com/tablog/entries.ja/2007/12/water.html