2008年4月17日木曜日

「ヨゴレ」のデザイン

 シミ、手垢、ホコリ、いかにネガティブなものであっても、デザイナーにとってはインスピレーションの種になりうるらしい。
 紙がコーヒーカップの輪ジミで濡れ、裏側が透けて見えている(かのように見える)新聞広告をつくって見せたのは森本 千絵さん(当時、博報堂)だったし、コップの結露というネガティブな現象を見事に付加価値へと転化してみせたのは新進気鋭のプロダクトデザイナー、坪井 浩尚さんだった。



 「美しさをさらに引き立たせる」のはデザインの重要な役割だとされているけれども、「美しくないものを美しく転化させる」のはデザインのより原始的な動機なのではないかと思う。

 商品開発やマーケティングの世界では良くvalue-added(付加価値)やnon-negative(マイナス要因の解消)についての議論が行われる。森本さんや坪井さんの作品を眺めていると、デザイン思考はnon-negativeから一気にvalue-addedへとドラスティックな転化をもたらす可能性を秘めているように思えてしまう。