2010年1月7日木曜日
リスク・ホメオスタシスについて
写真は、雪にまみれて視認性が落ちているLED信号機の写真。米ミルウォーキーで起きた思いもよらない事故の様子だ。省エネ効果の高いLEDは、電球と比べて放熱が少ないことが影響しているらしい。(via msn)
リスク・ホメオスタシス
技術者やデザイナーが良かれと思って開発した技術・システムでも、思いもよらな かった環境におかれたり、想定されない使われ方をすることがある。その結果、意図していたよ うには効果を発揮しないばかりか、最悪の場合は事故に至ってしまう。
よく知られているのは「防具をつけるようになって、アメフトは プレーが一層過激になった」というようなことである。こうした現象を最も過激に表現しているのが、カナダの心理学者ジェラルド・ワイルドが指摘する「リスク恒常性」(risk homeostasis)だ。ABS装着車の方が事故件数は遥かに多かったり、エアバッグ装着車のシートベルト装着率が低かったり、といった現象も、これに当てはまる。
ホメオスタシス(恒常性)は、元々は生物の内部に良く見られる自動調節現象だ。体温やホルモンバランスを一定に調節する機構などが当てはまる。まるで生物の体内のように、我々の社会は「見えざる手」によって、リスクが一定になるようにデザインされているのかもしれない。
デザインの業務上過失
リスク・ホメオスタシスは、品質管理の専門家を除いて、デザイナーにはあまり知られていない。多くのデザイナーにとってほとんどの「安全対策」は、「プラスのデザイン」として受け止められている。しかしデザイナーの「ささいな良心」が、大きな事故を引き起こすこともありえる。いわばデザインの、「業務上過失」である。
リスク・ホメオスタシスを回避する有効な対策として、利用者の心理に影響を及ぼすデザインが知られている。自動車の例でいえば、事故の損失や危険性を強く実感させるようなデザインを指す。こうした「マイナスのデザイン」が、もっともっと見直されるべきではないだろうか。
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