2009年4月10日金曜日

車椅子の人はバスに乗れるか?(その3)


そんなわけで、彼女はやっとバスに乗ることができるようになったわけだ。
で、一緒にバスに乗り込んでビックリした。少しばかりUD(ユニバーサルデザイン)に興味のある人なら、車椅子用の金具のことを知っている。それはつまり、バスの床についている車椅子固定用の金具だ。
しかしこの時のバスの運転手は、運転室から慣れた手つきで「バス用の輪止め」を持ってきて、ヒョイヒョイと車椅子につけてしまった。

前向きに見るか、後ろ向きに見るか
素晴らしい目的外利用だと思った。脳性まひの人が携帯電話を自分の眼の代わりとしたときのような、アドホックなクリエイティビティを見た気がする。
しかし同時に、これはコンプライアンス違反だと思った。指摘くんに見つかったら大変なことになるな、と思った。おそらく運転手さんはクビになってしまうだろう。
運転手さんが輪止めを使った理由は簡単だ。車椅子用の固定金具を使って保持するためには、まず一般客用の座席を2箇所(バスによって3箇所)跳ね上げる必要がある。そこに座っている人がいたら、どいてもらわないといけない。バスの運転手にとってその作業はとても面倒くさいし、何よりお客さんに迷惑をかけるのだ。車椅子の人も、他の客に迷惑をかけてまで自分の安全を少しばかり確保しよう、とは思わないかもしれない。

(つづく)