私は、あまり詳しく書けないのだけれど、セキュリティに関する仕事をしている。
何か新しい事をデザインしようとするときに、「悪意のある者が居たときに、いったい何をしでかすだろうか?」という事をひたすら考えるのが、セキュリティの仕事である。だから基本的に、セキュリティの仕事は性悪説に基づいている。悪人中心設計である。
事実、私の見てきた素晴らしいイノベーションのほとんどは、悲しい事件とか、事故・災害に基づくものである。悲惨な現実に目を向けて、その対策を考えることが、セキュリティの進展に結びつく。こういった視点が、デザインを見る目にも影響しているのかもしれない。
さて、一般の人は、そういう世の中のダークサイドとか、犯罪が具体的にどう起こっているかについて、ほとんど興味が無い。興味が無いどころか、見たくないとさえ思っている。もちろん、それで良いのである。誰も触れたくないタブーについて、執拗なまでに追い詰めるからこそ、立派な「仕事」として成り立つからだ。仕事とは、本質的に「人がやりたくない事をやること」だと、私は思っている。そこに、大きなビジネスチャンスがある。
インターネット社会のタブー
会社の同僚が、すばらしい本を監訳したので、今日はそれを紹介したくって筆をとりました。
タイトルは「セキュリティの神話」である。はじめに言っておくと、この本はそんなに売れないだろう。理由は簡単。冒頭の通り、「ほとんどの人はセキュリティーに無関心か、そんなダークな領域に触れたくないとさえ思っている」からだ。そして、「アンチウィルスソフトウェアを買うことで、そうした事を考えるのをやめて、安心したいと思っている」のである。
この本は、その「アンチウィルスソフトウェア」をつくっているマカフィーという大企業の前副社長が書いたプロのセキュリティ屋としての実にドライな書物である。全体を貫いている思想を一言でいうならば、「コンピュータ犯罪は経済原則によって成り立っている」ということになる。(つづく)
2010年5月12日水曜日
私のダークな仕事について
ラベル:
情報デザイン