2008年12月3日水曜日

関係性をデザインする、ということ。

  • 21世紀のデザインとは、「関係性をデザインすること」に他ならない。
 これは私の言葉ではない。尊敬する多摩美術大学の太田幸夫教授の言葉だ。太田教授は、小谷松敏文氏と共に、世界中の誰もが知っている非常口のピクトグラムをデザインしたことで良く知られている。

画像:PublicInformationSymbol EmergencyExit.png

 このピクトグラムは国際規格ISO 6309:1987 Fire protection--Safty signs(あるいはISO 7010:2003、国内では、消防庁告示「誘導灯及び誘導標識の基準」)で定められており、いざ火災が起きたときには、世界中の誰もがこのサインを頼りにして避難している。太田教授によればこの「デザイン」は、どこの国の人であっても、たとえ文字が読めなくとも、燃えさかる真っ赤な炎の中で、いかに安心して、いかに的確に非常口へ人を誘導できるかを意匠化したものだ。そのために地の色は緑色、そしてドアの向こうから差し込む眩い光が、逃げる方向が確実に安全な場所であることを示している。
 太田教授は図案を描く際に、必ずその図案を見た人が「どのように感じるか」を考え、そして沢山の人に直接聞き、あるいは統計的手法による有意差を考慮に入れている。そのデザインワークは、単なるプロダクト・デザイン、グラフィック・デザインといった枠にとどまるものではなく、まさしく「関係性をデザインすること」に他ならないと思う。

 先の「空鈴(coo-lin)」では、ちょっとだけこの「関係性のデザイン」に踏み込めたと自負している。