2008年11月20日木曜日

私がメルセデス・ベンツを嫌う理由

 前回、マッキントッシュが人の身体性を奪っているという話題を書いた。今回は自動車の話しをしてみたい。日本人が大好きなメルセデス・ベンツとBMWが考える、ヒューマンインタラクションの思想についてだ。

メルセデス・ベンツが目指すビジョン

 メルセデスのビジョンは明確だ。「人を出発地Aから目的地Bへ安全に運ぶこと」、これが彼らの持っているモビリティに対するビジョンだ。だから、ドライブ・バイ・ワイヤ(Drive-By-Wire方式を積極的に採用しているのもうなずける。ドライブ・バイ・ワイヤとは、ブレーキやらアクセルやらハンドルやらといったヒューマンインタフェースを、自動車のメカ構造と断ち切り、まるでゲーム機のように全てデジタル方式のセンサに置き換えてしまうものだ。通常であれば路面の状態をハンドルの微妙な挙動で知ることができるが、ドライブ・バイ・ワイヤ方式では(特別な制御をしない限りは)基本的に一切のフィードバックを得ることができない。
 むしろ、メルセデスではこうしたフィードバックを「ノイズ」と考えている。すなわち、「人を出発地Aから目的地Bへ安全に運ぶ」という目的のために、路面の状態をドライバーにフィードバックすることは有害である、という考えだ。未来究極のベンツというのは、自動運転によって100%ノーリスクで目的地に到達できるメカ(もはや自動車とは呼べないかもしれない)ということになるかもしれない。

Mercedes-Benz SL drive-by-wire Concept 1998 poster A31623

Drive-By-Wire方式のコンセプトポスター。ハンドルが、無いんですけど?





BMWのビジョン

 BMWは、「駆け抜ける歓び(Freude am Fahren)」を企業理念としている。これは、メルセデス・ベンツの「A地点からB地点へ」というビジョンと全く異なる。あくまでも自動車を従順なメカとしてとらえ、それを操縦する「歓び」をつくり出すのが車の役割、とする考え方だ。

http://creambell.air-nifty.com/photos/uncategorized/dvc40376.jpg

BMWに必ず貼ってある「Freude am Fahren」のポリシステートメント