2009年5月8日金曜日

インハウスデザイナーの「憂鬱」(その2)

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 ところが、モノづくりの衰退、価値観の物質文明からの転換、世界大恐慌といった、日本のインハウス文化を育ててきた本来の価値基準が崩壊するなかで、徐々にインハウスデザイナーの中に「憂鬱」の二文字が蔓延しつつある。インハウスという立場に満足しているいわばノンポリ的なデザイナーを除いて、「デザインによって豊かな生活をつくる」というスローガンがもはや通用しなくなっており、社会がこれまでの「デザイン」を求めていないこと、そしてインハウスデザイナーの立ち位置が危ういことに、誰もが気づき始めている。

社会に必要とされるデザイン
 いまもう一度、社会にとって意義ある「何か」を実現するためのデザインを、見つめなおす時期にきていると思う。世の中にはソーシャルエンタープライズ、地域コミュニティ、エコロジーといった取り留めのない未来像が蔓延しているけれども、デザイナーという職業が持つ「身体感覚」でこうした社会に体当たりし、何が必要なのかを敏感に感じて、そして描き出す必要がある。インハウスの武器である技術力やマーケティングなどのアセットは、そのために使われるべきだ。錆び付きつつある「デザインの武器」を再び研ぎ澄まして、新しい時代に相応しいデザインをつくっていくのは、悩めるインハウスデザイナーたちだと思う。さもなければ、シルミドのように消えゆく存在となってしまうのではないだろうか。