2009年5月7日木曜日

インハウスデザイナーの「憂鬱」(その1)

 「シルミド」という韓国の怖い映画があった。社会的に必要とされ結成された精鋭部隊が、いつしか時代が変わって不要となったため、「消去」されてしまうという実話に基づくストーリーだ。

社会とインハウスデザイナーの関係
 高度成長という特殊な経済情勢に呼応する形で、日本のインハウスデザイナーは生まれ、世界稀なる特殊な「インハウス文化」を生んだ。最初の世代はモノづくりが一番面白かった時代を生き、また現代の世代はその時代をなつかしみ、そして新しい世代は昔話を聞きながら日々デザインに勤しんでいる。
 自らの手仕事に誇りを持ち、会社の技術力やマーケティングを盾に多くのワークを行い、世に自らがつくった沢山の製品を送り出し、人々の生活を変える新たな価値を提供し、それに対するフィードバックや評価を得るのがインハウスデザイナーの醍醐味であり、それは欧米型のクラスター化された開発体制や、専業的なアトリエ系のデザインファームと比べると、より多面的で多彩な才能を発揮できるエキサイティングな職業だった。社会にとって意義ある「何か」は、デザインによって解決可能だった。それは新しい製品を出すことにあり、社会もそれを期待していた。