2009年5月18日月曜日

進化論的に見るデザイン思考(その4)

2.交配
  これはセックスを意味する。すなわち使えそうなアイディア同士を交叉させ、アイディアのフュージョンを起こすのだ。交配のプロセスは、 ある環境において優秀な遺伝子(すなわち評価の高い遺伝子)同士を交配させると、より評価の高い個体が生まれる可能性が高い、という仮説に基づいている。
 ちなみに、この仮説は優生学に直結するので、大変危険である。遺伝学は誇大解釈され、かつての日本の優勢保護法、断種手術、ひいてはナチズムといった非人道的な運動に結びついた事があった。もちろん、脳内でのデザイン思考を行う上で倫理的・社会的パラメータは関係が無いけれども、この点については注意しておきたい。
 さて、アイディアの交配は、デザイナーであれば誰もが積極的に行っている行為だと思う。造形的交配、インタラクションの交配、グラフィックの交配、アイディア、詩、機構など、その分野も様々に及ぶだろう。交配は、「自然淘汰」を生き残り、交配を行うに値する優良な個体に対して行われるべきたし、交配の結果としてより価値の高いアイディアを生成することを意識付けながら行うべきだと思う。
 淘汰も、交配も、いかにも自然の営みのように聞こえるけれども、そこには「偶然」というよりは、デザイナーによるかなり「恣意的」で、かつ「客観的」な指標に基づく操作が伴う。

(つづく)