上司とずっと折り合いが悪く、ある日突然、異動を言い渡されました。異動先は工場の生産ラインで、自分のデザインした製品の検品と箱詰めを流れ作業でやっています。
(インハウスデザイナー、34才、男性)
デザイナーとして採用されたはずが、就職した年にデザイン部門が解体され、営業に配属されました。同じく、デザイナー採用の友達はいま経理をやっています。
(中堅メーカー、22才、男性)
自分の「やりたい仕事」をつかめる人は数少ない。
自分の感性を信じて、学校でデザインの専門技術を学んで、さてやっと就職だというときに、クリエイティブ職ではない部署に配属されてしまったり、あるいは今のご時世どうしても就職先が見つからなくて、「やりたい仕事」ではない事をせざるを得ない人も居る。
さて、「やりたい仕事」というのは何だろうか?
長くデザイナーをやっている人で、「デザイナーは私の天職です」とか、「本当にやりたい仕事ができて幸せです」といっている人を、残念ながら私は見たことがない。もし居たら、ぜひぜひぜひ紹介してほしいくらいだ。ただし、以下の場合は除く。
- 本や雑誌の字面で読む有名デザイナーの語り口(だいたい美化しすぎる)
- 戦後日本の成長を支えた一部のスーパーデザイナー(時代が違いすぎる)
- 途中から管理職になった人(あまり手を動かさなくなった)
- 発注側に転職した人、もしくは学校の先生になった人(クライアントの言うことを聞かなくて良くなった)
- そもそもプロデザイナーではない人(筆者のような人)
さてそもそも仕事というのは、「やりたい」からやるものではない。ほかの人が「やりたくない」ことをするからこそ、はじめて価値があり、対価をもらえるというものだ。そうなると、「やりたい仕事」というコトバは、永遠に叶えられないからこそ意味のある魔法のように思えてくる。
処方箋
若いデザイナーから良く、「やりたい仕事」が出来ない!という相談を受ける。そういった人たちの境遇を聞けば、好みに合わないデザインをさせられているとか、デザインとは関係無い生産ラインに異動になったとか、営業や経理をやっているとか、同じデザイン好きとしては、思わず同情してしまう話しも多い。
でも、「デザインが大好きで、デザインの仕事をやりたい!」という気持ちを持っていられること自体、ものすごく幸せだと思う。その気持ちさえ捨てなければ、いつか絶対に叶えることができるからだ。
いつかまた始められるデザインの仕事への憧れを捨てず、ひたすら上司に異動願いをだしつつ、自分の技術を切磋琢磨して、良いデザインを見続ければ良いと思う。そして今の仕事の中で自分なりに出来る「デザイン」を探し求めるのも良い。そして最後に一番大切なこととして、
- お願いだから、どんなことがあっても三年間は会社を辞めないで!
「やりたい仕事」というのは、実を言うと転がる岩のようなもの。三年ごとに転がる三角岩なら良いが、それ以下のペースで転がる多角形だと、もはやどこの会社も相手にしてくれない。
たとえデザイナーとしての屈辱を味わおうが、あなたの大切なクリエイティビティを踏みにじられたとしても、「三年間」は続けてみてください。そして、その間に起きた愚痴は全てこの「デザイン思考」ブログに送ってストレス解消してください。お願いだから。
さぁみなさん、両目を三角にしながらご一緒に。
- 鉄の忍耐、石の辛抱(ゲーテ)