2010年4月7日水曜日

実録!こんなデザイン事務所はイヤだ!~CADを使わせてくれない編


いまどきCADを使わせてくれないんです
(プロダクトデザイン事務所、23才、男性)

使い終わった鉛筆10000本を糊で固めてオブジェにしたものが社長机の上に飾ってあって気持ち悪い
(グラフィックデザイン事務所、19才、女性)

設計事務所なんですけど、ずっとドラフターで仕事をさせられてます
(アトリエ系設計事務所、31才、男性)


これは、あちこちで良く聞く話しです。そういえば私の父はバキバキのグラフィックデザイナーですが、私が美大に入るときに「息子よ、1mmの中に烏口で何本線が引けるようになった?」と質問されました。私は「カラスグチって何ですか?」と応えて父を失望させたのを覚えています。

「手仕事の職人的な熟練こそが良い製品を生むか?」、と聞かれると答えはノーだと思います。ではなぜ手仕事が大切なのかというと、「心構え」とか「教え」による部分が大きいのではないでしょうか。

処方箋
例えばこんな風に考えてみましょう。新しいスーパーCADソフト「ダビンチ」が開発されたとします。ダビンチは建築、構造、図案、工業意匠などあらゆる分野の設計に使うことができて、息を呑むような美しいレンダリングをリアルタイムに生成できます。しかもこのソフトは、任天堂wiiで動作するのです。デザイナーは目を閉じて瞑想し、wiiのスティックを念じながら振り回すだけで、思い通りのモデリングができる、とされています。

あなたが社長をつとめるデザイン事務所に新入社員が沢山入ってきました。彼らは学校で習った通り、眼を閉じてwiiを振り回しながらモデリングをしています。しかし、そのデザインの出来栄えはイマイチです。
きっとあなたはこう思うでしょう。「頼むから事務所でそれを振り回さないでくれ。私がちゃんとしたCADソフトの使い方を丁寧に教えてあげるから!」

心がまえや知識の伝承(ミーム)という作業が大切だと思っている人ほど、つまり新しいデザイナーを育てようという愛のある人ほど、伝承する側と伝承される側の両者が話す言葉=「道具」というのが揃っていることを大切にするんだと思います。どちらかが相手と言葉=「道具」を合わせなくてはならないのであれば、合わせるべきは主人ではなく、より若く格下の側だというのが、この国の美徳だと思うのです。

さぁ、みなさんご一緒に。
「烏口を使おう。主人の愛と未来のために!」