2010年4月9日金曜日

実録!こんなデザイン事務所はイヤだ!~社長が宇宙人である編

社長が何を言っているのかわからない。
(テキスタイルデザイナー、21歳、女性)

上司が宇宙の言葉を喋っている。

(インハウスデザイナー、33才、男性)


これもしょっちゅう聞く話です。特にデザイナー上がりの人が上司や社長になった場合は、会話の内容が混迷を極めるようです。デザインは右脳を酷使するので、左脳がアポトーシス(戦略的に退化)してしまうのかもしれません。
そもそもコトバというのは、デザイン作業を行うにあたって大した効能がありません。同じ様に単語を並べたとしても、受け取る側のアタマの中に生まれる想念(イメージ)というのはバラバラです。これを修正しようとして単語を並べれば並べるほど、事態は混迷を極めます。コトバの単語そのものは共通なのに、受け取る側によってその効能が変わってしまうことを、ソシュールという賢人がいち早く気がついて、それぞれシニフィアン(意味するもの)とシニフィエ(意味されるもの)という風に明確に分けた定義をしているくらいです。

処方箋
デザイナーにとって、コトバというのはイメージの(出来の悪い)代替物でしかありません。コトバはイメージに従属するものであって、色々なデザイナーが自分の想念に基づいて好き勝手なコトバを使っています。そんなコトバの世界に飛び込んで、あれこれ思案することは大変な苦痛だと思います。なぜなら、社長(上司)から並びたてられたコトバというのは、その社長(上司)のアタマの中にしか存在しないイメージを代替したものでしか無いからです。コトバを真面目に受け取った結果、あなたは「社長(上司)は宇宙人じゃないか」という論理的不可能性に陥ってしまいます。しかし、現代のデザイン作業をするにあたって、言葉は不可欠です。もはや、「デザイナーは言葉の囚人である」と言っても過言ではありません。
さて、どうすれば良いのでしょうか?

  • その社長(上司)が、どのようにしてコトバを獲得したのか?

という原点に立ち戻るのです。といっても、社長(上司)の幼年期まで遡る必要はありません。ここでの「コトバ」というのは、日本語の文法とか基本単語という意味ではなく、「社長(上司)がデザイナーとして仕事をする上で獲得したコトバ」を意味しています。それはおそらく、青年期から脂の乗った30代くらいに得たものが多いでしょう。ですから、次のようなことをすれば良いのです。

  • 「社長!デザイナーとして若いうちに読んでおくべき本はありますか?」「勉強のため今度、ご推奨の本をお借りしても良いでしょうか?」などと言葉巧みに言い寄り、社長(上司)が、青年期に読んでいた本を教えてもらう。
これで怒られることは、まず無いと思います。あわよくば本も無料で貸してもらえるし、貴重な古本も読むことができます。最近のデザイン本はHow-toばっかりなので、昔のデザイン本の貴重さに気づく事があるかもしれません。そうなれば一石二鳥です。
それから、
  • 社長(上司)が口にする「宇宙語」を、片っ端からメモします。このとき、日本語の接続語とか文法を気にする必要はありません。意味の分からなかった単語や固有名詞をメモするだけで十分です。メモが難しい場合は、ボイスレコーダーでも構いません。最近は携帯電話に付いていますよね?その後、それらの単語を片っ端からGoogleで検索します。このとき、社長(上司)的に意味が近そうな単語を組み合わせて検索するのです。
というような事も現代的で有効な手法です。Googleは複数の単語の相関関係から関連の強い文書を探し当ててくれます。これは人間の中でのコトバのパズルに近い現象であり、社長(上司)のイメージを探る旅を助けてくれる事でしょう。
例えば一番上のマンガでは「コウモリ傘」「ミシン」という単語が出てきますが、この2つをGoogleに入れるだけで、それが何を言っているのか即座に見つけ出すことができます。
このようなことはテキストマイニング(文書から宝を発掘する作業)と呼ばれ、昔は大変高価な人工知能システムでしか実現できませんでした。今はせっかくGoogleという無料ツールがあるのですから、利用してみない手はありません。なお、どうしてもわからない言葉がある場合には、「デザイン思考」ブログまでコッソリご相談ください。

さぁ、みなさんご一緒に。
「主人の言葉は、春の冒険への旅立ち!」