2008年10月17日金曜日

形状操作によるデザイン~スタイリングの二重性


 「ロングエッグ」という商品をご存知だろうか。ファミレスやコンビニのゆで卵に良く使われている、業務用の加工卵のことだ。卵の黄身と白身を再加工することで、端部の無いゆで卵を実現している。いわば、金太郎飴の卵版である。
 ちょっと気持ち悪い感じがするけれど、れっきとした「無添加、無着色」の自然のままの卵である。形状を加工しながらも、顧客が期待する「理想的なゆで卵の形状」を維持している。

スタイリングとは何か
 ゼロから新しいスタイルを生み出すことは素晴らしい。それはプロダクトデザイナーにしか許されない特権的な領域である。しかし、失われつつあるスタイルの「意味」を保持することや、形状を変えられないと思われていたモノをスタイリングし直すことも、同時に世の中から求められているように思う。
 それは時に、ソフト食のような老齢学的なニーズであったり、あるいはロングエッグのような、飽食日本の顧客指向に陥りすぎたマーケットにおける、廃棄食材減少のための発想であったりする。
 また竹の自転車や四角いスイカのように、必然であり、変更不可能であると思われる素材をリ・デザインすることで、新しい価値を創出している例もある。もっと進んで、例えばいきなりベニア板が出来たり、いきなり家が出来るような木があったら、どんなに楽しいだろうか。
 「スタイリングの追及」とは、デザイナーの自己表現にとどまらず、社会との関係性、人々が持っている意味をつかみとりながら、それらの関係性を再構築することだと思う。

顔の写真から「ルビンの壺」的なオリジナル花器をつくってくれるTurnYourHead社のPirolette